第3回学術集会は平成20年3月30日(日)、シェーンバッハ・サボーで約250名の出席者を得て小規模ながら充実したプログラムの下に活発な討論を交えて無事終了しました。今回は日本生殖医療エンジニアリング研究会を発展的に解消し、日本生殖再生医学会と改称して初めての学術集会でありますから、主宰する側も新機軸を考え試行しました。
まず特記すべきことは文部科学省・研究振興局・ライフサイエンス課長の菱山 豊先生から「多能性幹細胞研究に関する推進方策と倫理的・法的・社会的問題への対応」と題する特別講演を頂いたことであります。ライフサイエンスの中でも近年とくに再生に関する基礎研究が急ピッチで進んでおり、ES細胞や組織幹細胞を出発点とした再生・移植医療が現実のものとなりつつあります。このような動向を踏まえ本学会の名称も改めたのですが、それにふさわしいモニュメンタルなご講演をできれば文部科学省の担当課の方にお願いできればと考えておりました。超ご多忙のため確答が得られなかったので、予めプログラムには掲載できませんでしたが、幸い直前になってお越し戴けることになりました。幹細胞研究に支えられる再生医療の将来像と研究推進政策について詳しいご解説を頂きました。
特別講演には東北大の佐藤英明教授が体細胞核移植について、招待講演には東京大の塩田邦郎教授が生殖細胞のエピジェネティクスについて、また京都大の篠原隆司教授が精子幹細胞の培養と遺伝子改変についてそれぞれ積年のご研究成果をご披露して頂き、本学会にふさわしい内容のご講演を賜りました。また、ランチョンセミナーでは慈恵会医大の大野典也名誉教授から臍帯血幹細胞の将来性についてのビジョンを語っていただきました。
今回の学術集会からポスターセッションを設けることにして公募したところ、予想を上回る29題の応募があり関係者一同大変嬉しく感じました。そしてその中から2題の優秀演題に賞を出すため選考委員会で審議いただきましたが、出題頂いた演者と施設に改めて厚くお礼申し上げます。選考委員長の野瀬俊明理事の感想では全体のレベルが結構高くて選出に迷って困った程であるとのことです。慎重審査の結果、国立生育医療センターの秦健一郎他の「異常妊娠のゲノム・エピゲノム解析」と滋賀医科大学・動物生命科学研究センターの岡原純子他の「カニクイザルにおける効率よい核移植の検討」が選ばれました。2人の受賞者には賞状と金一封が贈られました。
午後のセッションでは「着床に関する理論と実践」と題するシンポジウムを企画しました。着床の分子機構関連遺伝子、2段階移植と子宮内膜刺激移植法、pinopodesなどのテーマについて基礎から臨床応用に亘る諸問題について最先端の知見をご披露頂きました。本学会の趣旨は配偶子型絶対不妊の治療法の開発研究とともに着床機序の解明も含まれております。しかし、適当な着床モデルがないためか、着床機序の解明がブラックボックスに入っているので治療法もあまり手が着けられていないのが現状であります。そこでARTの現場で治療に携わっておられる方々のために企画したもので、4人の演者の最先端のお話から明日の治療に役立つ多くの情報が得られたことと思います。
全体として今回の学術集会も実り多い実績を残すことができましたが、これも演者と座長の先生方は勿論、常務理事、幹事、事務局の皆様方の支えがあって実現したものです。ここに改めて厚く感謝申し上げますと共にご報告が遅れたことをお詫び致します。
次回は平成21年3月15日(日)、久保春海副理事長に第4回学術集会会長をお願いして開催の予定です。充実したプログラムを用意してお待ちしておりますので、皆様お誘い合わせの上是非ご来駕のほどお待ち申し上げております。
2008年10月
日本生殖再生医学会
理事長・第3回学術集会長 森 崇英
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